15 Apr 2015

The Magic Whip全曲解説 byグレアム《後編》

NMEのインタビューにてグレアムが語った新譜The Magic Whipの全曲解説。
前回の記事に引き続き、7~12曲目となる後編です。
繰り返しになりますが、趣味で訳しているので意訳が「???」な部分もありますがどうかご容赦ください。

7. My Terracotta Heart
 アルバム発表のQ&Aセッションにて、デーモンが個人的な歌詞についての話題でモジモジしながらこう主張していた。「すべてがこの閉ざされた島(香港)に、何万人もの人に囲まれて居ることに関連しているんだ。」それはまあ確かにそうだろうが、この心に残る「My Terracotta Heart」という曲は、ある1人に向けて宛てられたものとなっている。「とんでもなく寂しい曲になるということは分かってたから、泣きのギターを入れたんだ。その時はデーモンと僕についての歌詞になるとは知らなかったんだ、僕らの長い友情と、経験してきたアップ・ダウンについての曲になるだなんてね。」とグレアムは語る。
 寂しげに過去を振り返り、『僕らは兄弟以上だった、でももうそれは遠い昔』とデーモンはしわがれ声のコーラスに乗せて歌う。そしてこう尋ねる、『何かが僕の中で壊れたの?その時なんだかワケが分からなくなって、また君を失ってしまうんじゃないかって』
 グレアムはさらにこう語る。「イイ曲だよね、僕ら4人がこのアルバムをもってして再会するという感じ… 僕らはそれぞれの旅に出かけていたというか、それでまた一緒にやろうぜとなって『My Terracotta Heart』みたいな曲が結果的に出来上がったんだから、僕ら全員のそれぞれのテイストや見方がうまく組み合わさったってことだね!」

8. There Are Too Many Of Us
 マーチングのビートに支えられているからか、この曲はどこか冷酷なところがある。デーモン曰く2014年のシドニーでの人質事件に一部インスピレーションを受けているということだが、地球上で最も人口密度が高い街の一つである香港の幻影も遠からず見える。グレアムによると、「この歌詞は何万通りもの解釈ができるでしょう。でも香港では時々窓の外を見て思うことがあるんだ、『あぁ、人が多すぎるよ…』って。それで、この感情と、僕たちはこのままじゃいけない(注:人口が増え続けては困るということ?)んだという事実について不安に感じ始めた。曲の後半になるにつれて緊張感が高まってくる感じが気に入ってるよ。この曲ではあんまりギターをプレイしていないんだ、シンセサイザーの方が合うと思って…殺人光線ビビビビビーみたいな図太くて大きい音を出しているよ。」

9. Ghost Ship
 「とってもデーモンらしい曲」とグレアムがこの曲「Ghost Ship」を一言で表しているが、まさにその通りだ。ゴリラズの柔らかいディスコ・ソウルが影響している、といえば想像できるところだろう。この曲においても、香港が歌詞の中にメインで登場する。実際、この街へのラブレターとも、デーモンがボーカルのレコーディングに先立って、インスピレーションを受けるために今年の初めに現地へ戻ったほどの魅力が描かれているとも取ることができる、『ちょっとの間離れていたけれど/より強く戻ってきた』と。
 グレアムはこう思い起こす。「香港に居る時、僕らはホテルを出てすっごい変なガラス張りのショッピングセンターを通り、綺麗にタイル張りされた地下鉄の駅周辺に電車に乗りに行く、という通勤・ラッシュアワーみたいな感覚をもってスタジオに通ってた。それで香港という街は行く先々、僕らに密着しているんじゃないかと思っている。僕らが見てたもの、聞いてたものが何とか音楽に落とし込まれたっていう感じだね。」

10. Pyongyang
 この曲は分かりやすく様々な憶測を呼んでいる、デーモンはキム・ジョンウンのブラックリストに載りたいのか?と。昨年GQ誌にデーモンが北朝鮮の首都・平壌への訪問について語ったところによると、平壌を「みんなが魔法の呪文にかかっているという意味で、マジック・キングダムだ」と例えている。そしてこの発言が「Pyongyang」を理解するためのカギとなっている。がらんとした通りと口にできない悲しみをはらんでいる、魔法にかけられたような大都市―それは『偉大な指導者を覆っているピンクの光が消えようとしている』と歌われている。みんなが考えているようにキム一家の支配をストレートに攻撃しているわけではなく、より幅広い意味での憐れな何か―美しくもわびしい、社会主義者たちのネバーランドの青写真なのではないだろうか。
 音楽的には「Pyongyang」は2003年の「Out Of Time」と共通しているところがあるが、後者は編集段階において切り貼りや変更が激しく加えられたものであった。グレアム曰く、「本当に暗いレクイエムで始まるんだ、この小さいゴーンゴーンゴーンというベルの音と、電車が発車するみたいな音も入ってる。最終的に壮大なコーラスになったけれど、最初にスティーヴンと僕で動き始めた時にはコーラスもボーカルも無かった、それでギャップを埋めるためのコーラスを思いついたんだ。後からデーモンが戻ってきたときに、あいつは自分で書いたんだけど…もちろんそっちの方が良くて。でも最後に僕が書いた部分も、デーモンのに重なって聞こえるよ。本当にシンプルな曲なんだけど、雄大に聞こえるでしょう。デーモンがコーラスで高いキーで歌う部分、これが最高の瞬間の一つなんだ!」

11. Ong Ong
 ビーチ・ボーイズのようなふわふわしたハーモニーとコーラスを聞かせてくれる陽気で楽しいこの曲は、この夏のハイドパークで演奏してくれ!と言わんばかりである。
 グレアムも同意し、こう語る。「まぁ元気なパーティソング、って感じだよね。デーモンが歌詞を仕上げてからボーカルを聴きに行ったときに、あいつが『ちょっと大衆的になっちゃったな』って言ったんだけれど、でもこういう曲でダメなことってないだろう。ほら、ビールが飛び交うような合唱ソングになるべくしてなるという。『I wanna be with you』の部分なんて、ビーチにいてヤシの木がゆらゆらして、ちょっとカラフルすぎて派手で、ちょっと気分が悪くなって、アイスクリーム屋さんがどこにでも居て、ロックスターたちがこぞって肌を焼に来ている…みたいな光景を思い起こさせるんだ。バハマ諸島の悪趣味な広告みたいな感じ。僕は結構好きだよ、でも時々変に訴えかけてくる曲ってあるよね、別にしなくてもいいようなことをしなきゃ、という気持ちにさせられるというか。でもその曲にやれ、って言われるからハイハイって従わなきゃいけないというね!」

12. Mirror Ball
 「Ong Ong」でのお祭り騒ぎの後、アークティック・モンキーズの「I Wanna Be Yours」を連想させるような、トレモロのきいた思いギターリフから成る瞑想的かつ感傷的な調べで、アルバムは終わりを迎える。
 「これもすっきりシンプルな曲なんだけど、やっぱり壮大でエモーショナルだよね。僕はいつも大胆にリバーブさせたコードとか、それをトレモロ・アームで歪ませるのが好きなんだ。中国やインドの音楽にあるように、弦を歪ませて出す不協和音が好きでね。」とグレアムは語る。

さてアルバムは2週間後の4月27日発売、いよいよ待ちきれません。
そんな中、今日BBCで放送されたLater.... with Jools Hollandの映像がさっそくアップされていたので、グレアムの解説と共にお楽しみください。

I Broadcast


Ong Ong

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